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コロナ後遺症と上咽頭擦過療法

新型コロナ後遺症でお悩みの方へ

新型コロナウィルスが2019年12月頃に蔓延し出して、世界中でたくさんの方が感染し、症状に苦しみ、亡くなっています。最近では重症化リスクよりも、後遺症に悩む方がかなり増えてきました。本ページでは「コロナ後遺症について」理解頂き、耳鼻咽喉科が行う「上咽頭擦過療法(じょういんとうさっかりょうほう)」の可能性についてお話致します。

上咽頭擦過療法は、EAT(イート)と略され、「Bスポット療法」とも呼ばれていますが、当院では上咽頭擦過療法(EAT)と呼んでいます。

新型コロナの後遺症とは?

ひと言で後遺症と言っても、その症状は非常に様々です。世界では「ロングコヴィット」と呼ばれ、非常に多くの方が後遺症問題で悩んでいます。強力な倦怠感を始めとした様々な症状は、基礎疾患のある方だけでなく健常者や若者も苦しめており、後遺症が原因で想像以上に多くの方が亡くなっているのが現実です。

WHO(世界保健機関)では感染者の10人に1人が後遺症に、日本の国立国際医療研究センターでは26.3%の方は半年後も何らかの症状が残っているとしています。半年後も・・・と書いたように、コロナ後遺症の症状は非常に長い期間に渡って私たちを苦しめているのです。アメリカやイギリスでは、多額の予算を拠出してコロナ後遺症の研究に乗り出しています。

日本でもようやく国が後遺症の存在と問題の大きさを理解し公表し始めていますが、海外の反応と対策の速さにはまだまだだ及んでいません。国がダメなら民間で、東京の「ヒラハタクリニック」さんでは3,500人以上のコロナ感染者を診察しており、後遺症に関しても抜きんでていると考えます。平畑院長も感染者の半数には何らかの症状があり、感染者の10%程度が外来での治療が必要だと仰っておられます。

「ヒラハタクリニック」院長の動画はコチラ

東京都が出している「新型コロナウィルスの後遺症について」というリーフレットが簡潔にまとめてありましたので、ポイントを抜粋してみました。

後遺症とは?

WHOでは「新型コロナウィルスに感染した人にみられ、少なくとも2か月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明がつかないもの」と定義しています。

後遺症が発症する割合は?

海外の報告では、診断から2か月で72.5%、診断から6か月で54%の方が何らかの症状を訴えているとの報告があります。

後遺症の症状はどれくらい持続する?

新型コロナ陽性と診断され入院歴のある患者さんの追跡調査では、いずれの症状に関しても時間の経過と共に症状のある患者さんの割合は低下する傾向が認められました。

諸条件(年齢、基礎疾患の有無、重症度など)で起こりやすさは変わる?

年齢、基礎疾患の有無、コロナにかかった時の重症度に関わらず、後遺症は発生しています。若いから大丈夫だとか、基礎疾患がないから平気だとは決して言えない状況です。

どんな症状?

主によく起こりがちなのが「倦怠感、嗅覚・味覚障害など」ですが、人によって様々な症状が出るようです。複数の症状を訴える方も多く、オミクロン株では咳(せき)が多いなど、変異株により傾向に差がみられます。

子供の後遺症は?

症状は「倦怠感、頭痛、嗅覚味覚障害」など、大人と同様に多岐に渡ります。傾向としては小学校高学年から中高生に多いですが、それより小さい子供にもみられます。

学校に通えないなど、日常生活に支障をきたすケースもあり、医療機関に相談することが大切です。というのも後遺症だと思っていたのが、小児の一般的な病気が隠れていたというケースもよくあります。

例えば息苦しいのが喘息発作である場合や、疲れやすいのが鉄欠乏性貧血の場合などであれば、ケースのよるものの原因が特定できて、治る場合もあります。後遺症は時間の経過とともに改善するケースが多いですが、辛い症状を周囲の大人が理解・共感してあげること、無理をしないで症状や本人の体調に合わせた生活を送ることが重要です。

主な症状

強い倦怠感

コロナ後遺症は人によってかなり状態が違うと言われています。肉体的や精神的に「だるい」「疲れた」「疲れやすい」という軽い症状から、「体が鉛のように重く感じられる」といった強い症状まで様々な訴えがあり、さらに重症化し「筋痛性脳脊髄炎」「慢性疲労症候群」に移行する事例も報告されています。

ある症例(40代男性)

コロナ療養終了後も「倦怠感」が数か月以上も続き、日によって度合は異なるが、100m程度の歩行で休息が必要になる日もある。肉体労働が多い職場であるので、職場復帰が出来ない状況。

 

重要!「クラッシュ」について

倦怠感の症状があるケースで、決して頑張って運動などはしないで下さい。無理をして運動した後に「クラッシュ」と呼ばれる、重度の倦怠感に襲われる症例があります。平畑先生以外の動画でも指摘されていますので、周囲の方も安易な助言はしないようお願いします。

えらい時は、休むことが非常に重要です。

ブレインフォグ

記憶障害、知的明晰さの欠如、集中力不足、精神的疲労、不安などを悩む「脳の中に霧がかかったような」認知機能障害の一種で、「頭がボーとする」という症状が特徴です。

ある症例(50代男性)

コロナ療養終了後も「倦怠感」「呼吸困難」「全身の痛み」が続いていたが、コロナ罹患から数か月後に症状が悪化。「記憶力が著しく低下」し、職場でもミスが続き、精神的にも不安定な状況。

せき

コロナ罹患時から、咳の症状が長いと数か月も継続する事例が報告されています。オミクロン株による感染と疑われる方からの訴えが多い傾向です。

ある症例(30代女性)

コロナ療養終了後に職場復帰したが、「せき」「息苦しさ」「疲労感」「が1か月以上も続く為、医療機関を受診しました。咳止めや漢方薬を処方され、受診から1か月後に「せき」は改善、さらにその1か月後に「息苦しさ」などの症状も改善。

その他の症状

  • 味覚・嗅覚障害・・・味やにおいがわからない、今までと違うとかんじるなど。
  • 呼吸困難・・・息切れや息苦しさなどの呼吸症状
  • 発熱・・・一般的な発熱のほかに、長期間にわたる微熱など。
  • 抜け毛・・・コロナ回復後(中には数か月後)に出現するケースもある。

他にも様々な症状が起こる場合があります。表面的にはコロナは治ったとしてもウィルスは長く体内に留まるという報告もされていますし、後遺症の苦しみは私も周囲でたくさん聞きますので、他人事ではありません。

対策

残念ながら、現在のところは根本的に治す方法はありません。熱を下げる解熱剤や漢方薬を飲む程度しか治療は出来ていないのが現実です。

しかし耳鼻咽喉科で古くから行われている治療法が、コロナ後遺症に有効なのでは?と言われ、実際に効果が出ているとの報告が相次いているようです。次の章では、私たち耳鼻咽喉科専門医が出来ることをお話していきます。

 

耳鼻咽喉科医が出来ること

それが「上咽頭擦過療法(じょういんとうさっかりょうほう)」「EAT(Epipharyngeal Abrasive Therapy)イート」とか「Bスポット療法」と呼ばれている治療法です。

元々は、元東京医科歯科大学耳鼻咽喉科教授の故堀口甲作名誉教授が考案、行っていた治療法で、鼻の奥、喉の上あたりの炎症を起こしている部位に、塩化亜鉛を塗布する方法です。Bスポットの名前の由来は、「鼻咽腔(びいんくう)」の「び」から名付けられました。こう聞くと「なるほど~」とうなづけますね。

もともと風邪をひきやすかったという堀口先生は、東大医学部を卒業してからも「喉のイガイガの正体はなんなんだろう」と思っていたところ、先輩医師から「それは炎症だ」と教えられたそうです、注射器で塩化亜鉛(消炎剤の一種)を噴射されたときにあまりの痛さに飛び上がった経験があるそうです(笑)。

その後、実家で40度の熱を出していた甥に、塩化亜鉛を咽頭綿棒に染みこませて塗布したところ劇的に改善したことから、綿棒によって炎症箇所に直接、塗布するという新しいスタイルが生まれてきたのでした。

しかし現在は、専門である耳鼻咽喉科でも積極的には行わなくなっています。先ほど劇的に・・・とは書いたものの、どんな症例にも効くわけではありませんし、正式な研究で実証されたわけではありません。海外ではほとんど行われていないと聞いています。それなのになぜここで改めてお話するかという事ですが、それは新型コロナ後遺症の治療に効果があるかも?と言われだしたからなんです。

実証は出来きませんが実際に効果があった、症状が和らいだという報告があり、後遺症外来を行っている医療機関を中心にBスポット療法を行っています。

日本病巣疾患研究会(NPO法人)のホームページで、地域ごとの「Bスポット治療実施医療機関」が公表されています。

*さらに詳しく知りたい方は「EATの詳しい内容」

 

「新型コロナ後遺症に悩む方々への一つの提案」という意味で、EATをご紹介致しました。

実際、当院にも遠方からEATを希望する患者さんがいらっしやいます。本院がある三重県でも当治療を行う医療機関はごくわずかで、後遺症が少しでも良くなればというお気持ちで来院頂いているようです。

現在の医療はエビデンス(実証されている治療)がない治療は極力しない方向ですが、治療法がほぼない状態の病気などに関しては、例外もありです。EATはまさに該当すると思います。本人にしかわからない辛いコロナ後遺症の症状を、少しでも和らげるのなら治療を行っていきたいと考えます。該当の方はお気軽にご相談下さい。

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