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めまい診断

めまいには大きく分けると下記の3種類があります。

  1. グルグルめまい(回転性めまい)
  2. フラフラめまい(浮遊性めまい)
  3. 眼の前が暗くなる等(全身に原因があって起こるめまい)

必ずしもではありませんが、各々の症状を引き起こしやすい疾患があり、一つ一つ見ていきましょう。

1. グルグルめまい(回転性めまい):耳に原因があって起こるめまいが多い

回転性のめまいの場合には、めまいと同時に耳鳴りが起きる場合があります。また、気分が悪くなるために吐き気や嘔吐を伴うこともあります。回転性めまいは半規管(耳のバランスの神経の一つ)が何らかの原因で正常に機能しなくなることによって起こることが多いのですが、絶対ではありません。

回転性めまいの代表的な病名として良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎などが挙げられます。

a) 良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo:BPPV)

ある一定の頭の位置や動かしたことにより、誘発される回転性のめまい発作を特徴とします。眼の異常な動き(眼振と言います)が、頭を動かした後数秒後に現れ、10~20秒程度の短時間でなくなります。当院では、赤外線のカメラがついた特殊なメガネのような検査機で、この眼振を正確に観察し、診断します。BPPVの場合は、そのままリハビリの体操を治療として施行する場合もあります。


耳の神経の内耳の中にある半規管というところに浮遊した耳石が原因で起こります。なぜ耳の中に石が?と思われると思いますが、この石は耳の中に入った石ではなく、元々内耳という神経の中にある耳石器という耳のセンサーの中にある石です。それが何らかの原因(加齢など)により脱落し、半規管の中に舞い込んで、浮遊してめまいを引き起こしているといわれています。

BPPVの診断では、どこの半規管に病変があるかを特定するのが大切です。罹患した半規管により後半規管型、前半規管型、外側半規管型に分類されます。眼の異常な動き(眼振と言います)を観察する検査で、どこの半規管に病変があるかを特定します(裏返して言うと、この検査をしなければ、正確なBPPVの診断はできません。)。

眼振検査

薬物療法以外に行われるリハビリの体操(eply法等)はこの浮遊耳石を元の場所に戻してやる体操です。積極的にこのめまいのリハビリを入院して加療している病院もあります(『めまいは寝てては治らない』横浜市立みなと赤十字病院耳鼻いんこう科 新井基洋医師)。

最も多い後半規管型BPPVに対して、上記のリハビリを施行することによって、80%以上の有効率が報告されており、めまいの消失時期を早めることも証明されています。病変部位が特定され、確定診断がついた場合、当院ではリハビリの体操(eply法等)を施行します。また自宅で行うリハビリの体操の指導なども行っております。

b) メニエール病

典型例では、めまい、耳鳴り、難聴の3症状を発作的に繰り返す病気で、フランス人のメニエルが、めまいのなかには、脳の病気ではなく、内耳の異常によるものがあることを見つけました。

原因は、耳の神経の内耳の中にある三半規管のむくみ(内リンパ水腫(上図))が原因で起こります。
内リンパ水腫の原因は不明ですが、ストレス・過労・睡眠不足などが原因で起こると言われています。

この病気の大変なところは、耳鳴やめまい発作を繰り返し、やがて耳鳴や高度難聴が残ることがあります。
ですので、メニエール病の疑いのある方は確定診断をするために、聴力検査は必ず必要です。まためまい発作がなく、耳鳴・難聴のみを繰り返す内リンパ水腫(蝸牛型メニエール)もあり、聴力変動を観察していくことも、確定診断には大切です。

ご自身では聴力の変動を観察することは難しいので、気になる場合は検査のご相談をしてください。

治療について

① 内リンパ水腫のむくみを取る事を目的とした治療
② 症状の抑制を目的とした治療(特に急性期を中心に行います。)

に二分されます。詳細は、個々に異なり、診察にてその方にあった薬を選択致します。

メニエール病はストレス・過労・睡眠不足など心身のくたびれを和らげる生活改善が大切です。ストレスが多くても心身のくたびれを短時間に解消できれば、またすぐに解決できなくとも一時これらを忘れる時間を定期的に持つことは、イライラを和らげる事ができます。

生活指導の一例
1. 生活時間

できれば9時までの帰宅を。無理であれば、帰宅を1時間早める。6.5~7時間の睡眠を確保する。できれば起きてから1時間以内に朝散歩などをして、太陽の光を浴びて、体内時計を決まった時間にリセットして、生活リズムを整える。

2. 楽しみ

仕事以外の継続的な楽しみを持つ。毎日のささやかな楽しみと週末の少し大きな楽しみを持つ。

3. 外向的娯楽の勧め

少し汗をかく運動やスポーツを実践する(運動すると、成長ホルモンが出て、却って疲れが取れ、睡眠の質が高くなります。)。
声を出す、話す、歌うなど、外に向けた娯楽を勧める。

 

メニエール病は、聴力やバランスを取る神経が悪い状態で固定してしまうと改善は困難です(約15%程度)。症状が変動している固定する前に、是非ご相談下さい。

c) 前庭神経炎

感冒などによる内耳のウイルス感染や血行障害が原因と言われています。障害側の耳のバランスを支配している神経の機能低下(前庭機能低下)により、回転性めまいが起こります。メニエール病と違い、難聴や耳鳴はありませんが、激しい回転性めまいが起こることがあります。

急性に生じる内耳障害による激しい回転性めまいは、この前庭神経炎や急性の感音性難聴を来すめまいを伴う突発性難聴を含め、比較的よくありますが、急性期のめまいの最も重要なポイントはめまいの原因が脳から来ているか(中枢性)か耳から来ているか(末梢性)を確実に見極める事が大切です(d)急性期のめまいの診断と治療に詳細あり)。

回転性めまいがなくなったあとも、特に頭を動かした時に、フワフワした感じが残る時があり、バランスを支配している神経の機能が著しく低下している場合があり、注意が必要です。ある程度普段通りの生活レベルの事ができるまでに、1か月程度かかることもよくあります。

めまい発作が著しい時期は、動くとうまくバランスを保てず、危険な場合もあり、安静が必要です。
但しある程度めまい発作が落ち着いてきたら、安全を確保しながら、体を動かした方が、リハビリが進みます(前庭代償)。相談しながら、ご希望される方には積極的なリハビリをすることもあります。

その他にも難聴・耳鳴を伴うめまいで聴神経腫瘍といった聴こえの神経の腫瘍などもあります。ご相談しながら、頭部CTなどの検査を脳の異常も含めて、精査していく必要があります。

d) 急性期のめまいの診断と治療

急性期のめまいの最も重要なポイントはめまいの原因が脳から来ているか(中枢性)か耳から来ているか(末梢性)を確実に見極める事が大切です。生命に危険のある脳の出血・梗塞がめまいの症状で発症することがあり、これらを見逃さずに早期に適切な処置を行うことが重要です。

耳が原因のめまい(末梢性めまい)では、頭位により影響される強いグルグルめまい(回転性めまい)を訴えることが多く、逆に脳に原因があって起こるめまい(中枢性めまい)では、回転性めまいの程度は軽度あるいは中等度のことが多く、フラフラめまいとして感じることが多いです。しかし中枢性めまいの中でも、一部の病気はグルグルめまい(回転性めまい)として発症し、自覚症状だけからでは脳から来ているか(中枢性)か耳から来ているか(末梢性)の鑑別は困難です。ご自身で迷われる場合はご相談下さい。

2. フラフラめまい(浮遊性めまい):脳に原因があって起こるめまいが多い

脳からのめまいは、耳からくるめまいに比べて、あまり多くなく、めまい全体の10%位です。
めまいの原因となる脳の障害は、主に小脳や脳幹などの病気です。

a) 脳出血、脳梗塞など

小脳出血の頭部CT

激しいめまい(フラフラめまい)が生じ、「ろれつ」が回らなかったり、物が二重にみえたり、上手く歩けなかったり、身体の片側に麻痺やしびれ、激しい頭痛などの症状があることが多いです。

このような典型的な症状がある場合は、神経内科・脳神経外科を受診されると思います。
しかし障害の部位によっては、必ずしも上記のような典型的な症状が起こらず、グルグルめまい(回転性めまい)が起こることもあり、耳鼻咽喉科受診後、疑わしい場合は、早急に神経内科・脳神経外科を受診する必要がある時もあります。脳出血を疑う場合は、CTを撮影し診断を確定します。

脳梗塞の治療には抗血小板療法、抗凝固療法、血栓溶解療法などが行われます。

b) 椎骨脳底動脈循環不全

椎骨脳底動脈循環不全症の病変部位

椎骨動脈および脳底動脈は、主に小脳や脳幹を栄養する血管で、これらの血管の循環不全で、めまいが生じます。めまいの他、視野障害、意識障害、運動失調、麻痺、構音障害などがあります。

めまいを訴える方が多いのですが、所見がほとんど得られないのが特徴で、このような循環不全はCTやMRI検査でも異常が見つかりません。耳鼻咽喉科受診後、神経内科受診をお勧めすることがあります。

3. 眼の前が暗くなる(眼前暗黒感)等:全身に原因があって起こるめまい等

① 眼の前が暗くなる(眼前暗黒感)

起立による立ちくらみや動悸
血圧異常によるめまい・自律神経の失調によるめまいの可能性があります(起立性調節障害)。起立に伴い脳への血の巡りが悪くなっているのは体のシステムの異常(圧受容体反射、下半身の筋ポンプ作用、循環維持機構の異常)が関係しています。血圧を測る検査などをして診断、著しい場合は内服薬で管理することもあります。

② めまい以外の頭痛・頭重感・肩こり・動悸・発汗・のどの異物感:心因性めまい

バランスを支配している神経の機能低下(前庭障害)が全くないにもかかわらず、心理的因子によりめまいを感じる場合があります。通常のめまい治療で症状が改善せず、精神的な緊張状態で、症状が悪化する場合などがあり、心理テストなどで異常を認める場合、心療内科・精神科へのコンサルティングをお勧めする場合もあります。

上記でお話ししためまいは代表的なもので、他にも様々な原因があります。
『脳のCTを取ってもらったけど、異常はなく、耳鼻科受診を勧められた。』など気になる方は、まずめまいの検査を受けることをお勧めします。
当院では、眼の異常な動き(眼振と言います)を観察する検査(下図)、からだのバランスを調べる検査(重心動揺検査:下図)などの検査も可能です。ご心配の方はご相談下さい。

眼振検査

重心動揺検査

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